執筆者 : E.Y ㈱ヤマナカゴーキン フィールドセールス チーフエキスパート
エンドミル形状をリアルに再現|CAE×高精度スキャニングで切削加工の現場改革を支援

工具形状のわずかな違いが、切削性能や加工品質に大きな影響を及ぼす──。
精密加工の現場では、そんな繊細な課題が、設計や工程改善を難しくしています。特に、工具の摩耗や製造誤差による形状変化は、設計時に想定した理想形状とは異なる挙動を引き起こし、CAEシミュレーションと実加工結果とのギャップを生み出す原因となってきました。このギャップを埋めない限り、加工条件の最適化や設計改良の確実性を高めることは困難です。
そこで今回ご紹介するのが、3Dスキャニングによる実工具形状のデジタル化と、それをもとに行うCAEソフト「DEFORM」による高精度シミュレーションです。実測データを取り込むことで、より現実に即した加工挙動の予測が可能となり、工程改善や工具設計に直結する新たなアプローチが実現します。
本コンテンツでは、エンドミルを対象に行った解析事例をもとに、3Dスキャニング技術とCAE解析を組み合わせることで得られた成果と、現場にもたらすメリットをご紹介します。
目次
エンドミル形状をCAE解析に反映
切削加工において使用される工具の設計情報は、工具メーカーにとって非常に重要なノウハウの一部です。そのため、詳細な形状データや設計図面を、ユーザー側が入手することは容易ではありません。
しかし、近年では3Dスキャニング技術の普及により、状況が変わりつつあります。リバースエンジニアリング技術の発展により、企業自らが実際の工具をスキャニングし、デジタルデータ化して活用する取り組みが進んでいます。
例えば上図のように、エンドミルの2枚刃形状を高精度にスキャニングし、その形状データをCAE解析ソフト「DEFORM」に取り込むことで、実際の工具に限りなく近いモデルを用いた加工シミュレーションが可能になります。もちろん、スキャニングデータをCAE解析で使用するためには、適切なモデル定義やデータ整備が求められます。
しかし、こうした技術を活用することで、加工現場の実態とシミュレーション結果との一致度を大きく高めることができます。
CAE活用と高精度スキャニング環境を誇るヤマナカゴーキン
なお、CAE解析ソフト「DEFORM」の国内唯一の販売代理メーカーである㈱ヤマナカゴーキンでは、こうした現場実態に即したシミュレーション精度向上を支援するため、スキャニング・三次元測定に関しても万全の環境を整えています。
㈱ヤマナカゴーキンは、1966年の創業以来、鍛造用金型製作において高い技術力を培い続けてきた老舗メーカーです。超硬合金素材の活用や、自動車部品用金型への対応、CAE技術の積極的導入など、常に技術革新を積み重ね、国内外で確かな信頼を築いてきました。
この金型製造で培った実加工と高精度測定のノウハウをベースに、現在では最新鋭のNS加工機を多数配備し、圧倒的な精度のスキャニング環境も構築しています。特にスキャニング・測定設備については、三次元測定専用ルームを設置し、室温を20℃±0.5℃に徹底管理。温度変化による測定誤差を最小限に抑える体制が整っています。
また、設備面でも、ZEISSやLEITZといった世界最高峰の三次元測定機を複数台保有。歯車1枚1枚の寸法検査においても、0.1ミクロン単位での高精度測定が可能です。
こうした環境のもと、㈱ヤマナカゴーキンでは、スキャニングによる実測データの取得から、データ整備、CAEソフト「DEFORM」への適切な取り込みまでを一貫して支援。さらに、DEFORMを活用した現場工程の最適化や、加工プロセス全体の効率性向上に向けた技術サポートまで、トータルで提供しています。
実際の加工現場に即したリアルなシミュレーション環境を構築し、クライアントのものづくり力強化に貢献しています。
DEFORMと高精度スキャニングで始める現場改革
CAEソフト「DEFORM」と、㈱ヤマナカゴーキンがご提供する高精度なスキャニング・解析支援を活用すれば、これまで見えなかった摩耗の影響や加工特性の変化も、データに基づいて正確に捉えることができます。
現場に根差したシミュレーションを通じて、
工程改善、試作削減、コスト最適化──
未来のものづくりへと繋がる第一歩を、私たちと共に踏み出してみませんか。
お客様の現場に最適な提案と技術支援をご用意して、㈱ヤマナカゴーキン一同、皆さまからのご相談を心よりお待ちしております。
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このシミュレーションテーマでよくある質問
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下記のサービスをご用意しております。
- ユーザー向けのトレーニング(3D、ポスト)
- ユーザー専用サイトに掲載されているFAQ、マニュアル、チュートリアル
- 電話、メールによるサポートサービス
切削(マシニング)テンプレートでは、どのようなモデルを解析できますか?
Turning、Boring、 Milling、 Drillingの主な4つのプロセスを設定できます。
ウィザード形式で設定を進めることができ、簡易的なチップなどの形状データを3次元CADを使用せずに作成できる機能やALE法を用いた定常解析を行うことができます。