プレス加工

執筆者 : E.Y ㈱ヤマナカゴーキン フィールドセールス チーフエキスパート

破断現象をCAEでリアルに再現|DEFORMが実機と高い一致性を示した解析事例

破断現象をCAEでリアルに再現|DEFORMが実機と高い一致性を示した解析事例

プレス加工における破断や製品側のカエリは、ダイスとパンチのクリアランスなどの条件設定によって、大きく挙動が変わる繊細な現象です。こうした違いを試作なしで再現・検証するには、CAEシミュレーションの信頼性が欠かせません。

 

CAE解析ソフト「DEFORM」による2次元シミュレーションを用い、実機試験と比較しても、高い一致性を示した「破断挙動の解析事例」をご紹介します。また、クリアランス条件の違いによって変化する破断のタイミングや、製品側にカエリが残る傾向も、シミュレーション上で可視化・比較しています。

 

2次元で破断挙動を高精度にシミュレーション

CAE解析ソフト「DEFORM」の高いシミュレーション精度を示す一例として、DEFORM販売会社㈱ヤマナカゴーキン所有のプレス試験機によって実施された、破断試験との比較検証事例をご紹介します。

対象となったのは、SUS304材(寸法:φ40×t10)で構成された弾塑性体ワークを、上方からパンチで打ち抜くプレス成形工程。この工程をDEFORMによって2次元シミュレーションし、3次元的に可視化した結果と、実機テストの結果を照らし合わせたものです。

 

解析モデル

 

パンチがワークに食い込み、下方から亀裂が進展していく破断プロセスが、CAE上でも明確に再現されました。特に注目すべきは、破断の進展長さや、打ち抜きカスの寸法精度における実機との高い一致性です。

 

実験結果と解析結果

破断の長さ カスの全長 カス先端の湾曲部分の高さ
実機テスト 4.50mm 8.7mm 1.30mm
CAE-DEFORM 4.53mm 8.8mm 1.32mm

 

これらの数値が示す通り、CAEDEFORM」は極めて高い精度で実機挙動を再現できることが確認されました。

また、破断がどのタイミングで発生し、どのように進展していくのか――その一連のプロセスを視覚的・数値的に捉えることができる点も、破断不良の未然防止や、最適な打ち抜き条件の検討において、非常に有効な手段となります。

 

このようにDEFORMのシミュレーションは、単なる可視化にとどまらず、信頼に足る現象の再現性を伴った検証ツールとして、実務現場での活用価値を発揮しています。

 

クリアランスの違いで変わる破断挙動

クリアランスの違いが破断タイミングにどう影響するか?

プレス加工現場では、同じ材料・同じ金型を使用していても、条件設定のわずかな違いが、破断のタイミングや挙動に影響を及ぼすケースがあります。なかでも、ダイスとパンチのクリアランスは、破断現象において重要な要素の一つです。
今回ご紹介するのは、そのクリアランスの違いによる破断挙動の変化を比較検証した事例です。

下図のアニメーションは、クリアランスの設定を以下の3パターンで変更し、それぞれの破断挙動を比較したものです。

 

左側 中央 右側
クリアランス1.0mm(直径) クリアランス2.0mm(直径)

クリアランス3.0mm(直径)

 

 

 

パンチとダイスのクリアランス違い

この比較シミュレーションにより、以下の傾向が明確になりました。

・クリアランスが小さいほど、破断の開始タイミングが早くなる
・クリアランスが大きくなると、破断が始まるタイミングが遅れ、進展の様子にも違いが出る

このように、DEFORMを用いることで、現場で試作・検証を繰り返さなければ見えてこなかった加工条件と破断挙動の関係を、事前にデータとして把握することができます。

 

カエリ(バリ)の発生傾向をCAEで“見える化”

プレス加工においては、破断の有無だけでなく、破断後に製品側へ残る“カエリ(バリ)”の発生も、品質管理上の重要な評価ポイントです。

CAE「DEFORM」では、破断タイミングだけでなく、破断後にワークがどのように変形するかまでを追従することができるため、クリアランス設定が、製品側にどのような後残りを与えるのかといった視点でも解析が可能です。

 

パンチとダイスのクリアランス違い

実際に、先ほどと同じく、3条件でクリアランスを変化させた破断シミュレーションを行いました。その結果、クリアランスが大きくなるにつれ、破断が始まるタイミングが遅れ、その分、素材が内側に引っ張られるように変形し、カエリとして製品側に残る可能性が、シミュレーションによって可視化されました。

つまり、クリアランスの設定次第で、破断挙動だけでなく“カエリ”の発生傾向まで事前に予測できるということです。

 

このような解析は、製品図面上では確認できない「成形後の細部形状」の把握に有効であり、仕上げ工程の削減など、工程設計の最適化に向けた重要なヒントとなります。

 

CAE導入で、破断現象は“見てから考える”時代へ

プレス加工における破断やカエリの発生は、わずかな条件差によって結果が大きく変わる現象であり、設計や品質保証の観点でも長年の悩みとなっています。

CAE解析ソフト「DEFORM」は、こうした現象を実機と高い一致性をもって再現できることが、今回の検証でも明らかになりました。破断の開始タイミング、進展の様子、そして加工後の仕上がり形状にまで及ぶ挙動を、視覚的かつ数値的に把握できることで、加工条件の最適化や試作レスの実現にも貢献します。

 

DEFORMイメージ

「破断は仕方ないもの」「カエリは後から処理するもの」――そうした常識を覆すための一歩として、DEFORMを通じて事前に把握するという設計のアプローチを検討してみてはいかがでしょうか。

 

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このシミュレーションテーマでよくある質問

非公開: 検討段階でどのようなサービスをしてもらえますか?

電話、メールからご相談を承ります。
必要に応じて、お客様の製品のベンチマーク、無料体験セミナー受講のご案内といったサービスをご提供いたします。

 

■ 無料体験セミナーの案内
導入をご検討中のお客様を対象に、DEFORMの無料体験セミナーを開催しています。

準備するハードウェア、対応OSについて教えてください

【OS】Windows11,10,8.1(64bit)
【メモリ】32GB以上推奨
【HDD空き容量】10GB以上

※CPUのスペックには特に必須スペックはございませんが、動作周波数が高いほど、計算速度が向上します。
※Windows以外にLinuxも対応しております。

解析で計算できる要素タイプは何ですか?

2次元では、四角形要素です。
3次元では、四面体要素、五面体要素、六面体要素に対応しております。
全て1次要素を用いています。

DEFORMは、鍛造用と聞いたことがありますが、ほかの工程の解析には対応していますか?

はい。鍛造以外にも、板鍛造やロール成形、締結などの塑性加工全般の解析ができるようになっています。
また、切削や熱処理、などの分野にも対応しております。

年間使用契約に比べ、永久ライセンス(買い取り型)は、どのようなメリットがありますか?

次年度からの更新費用が保守サービス料のみとなり、年間契約に比べ、少ない費用で更新できます。
長い目で見ると、費用的にも割安になります。

 

ライセンスについての詳しい内容は、下記ページよりご確認ください。

■ 導入プランページ
DEFORM製品8つのラインナップと2つのライセンス形態

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