執筆者 : E.Y ㈱ヤマナカゴーキン フィールドセールス チーフエキスパート
CAEシミュレーションを使いこなせていますか?現場で差がつく5つの重要ポイント
かつて、製造業においてCAEシミュレーションは「本当に信頼できるのか」と疑問視される存在でした。しかし現在では、実機結果との整合性も高まり、DEFORMに代表される解析ツールは設計・開発の現場に広く浸透しています。
しかしその普及と引き換えに、結果だけに注目してしまう、またはシミュレーションを根拠なく信じてしまうといった、本来押さえるべき工程や考え方が軽視されるケースも見受けられます。
例えば、金型内での材料流動や、一打ごとの変形挙動まで可視化できる現在だからこそ、「どのように使うか」がより重要になっていると言えるでしょう。
DEFORMを扱うヤマナカゴーキンでは、CAEシミュレーションを現場で有効に活用するために、5つの重要なポイントを提唱しています。本コンテンツでは、その考え方をもとに、CAEを“使いこなす”ための視点を整理していきます。
目次
① 目的を明確に ― 何を知るための解析なのかを定義する
CAEシミュレーションを活用する上で、最初に整理すべきなのは「何を知りたいのか」という目的です。言い換えれば、「何のために解析を行うのか」を明確にすることが、すべての出発点になります。
例えば、鍛造工程において
・充填不良を防ぎたいのか?
・金型寿命を延ばしたいのか?
によって、見るべき結果は大きく異なります。前者であれば材料の流動や未充填部の発生状況、後者であれば金型にかかる応力分布や接触圧力といったパラメータの確認が重要になります。

また、熱処理であれば
・焼入れ後の変形を予測したいのか?
・割れの発生リスクを把握したいのか?
によって、温度変化だけでなく、相変態や応力の連成挙動まで追う必要がある場合もあります。
切削工程においても、
・加工後の寸法精度を見たいのか?
・残留応力の分布を把握したいのか?
によって、解析の設定や着目点は大きく変わります。

このように、目的が曖昧なままでは、「どのパラメータを見るべきか」「どの程度の精度が必要か」といった判断も曖昧になり、結果として有効な検討にはつながりません。だからこそ、シミュレーションを実行する前に、「何を知りたいのか」「そのために何を確認すべきか」「どこまでの精度が必要なのか」を整理しておくことが重要です。
CAEは、目的に応じて使い方を変えることで初めて価値を発揮します。まずはその“目的設定”こそが、解析の質を左右する最も重要な要素と言えるでしょう。
② シミュレーションの過信はダメ ― 結果は“前提条件”で決まる
CAEシミュレーションは非常に強力なツールですが、その結果をそのまま“正解”として扱ってしまうのは危険です。シミュレーションはよく「電卓」に例えられますが、入力する条件が誤っていれば、当然ながら出てくる結果も誤ったものになります。
例えば、鍛造解析において摩擦係数や材料特性の設定が実機と乖離していれば、当然ながら材料流動や荷重の予測結果も現実とは異なるものになります。また、熱処理において相変態の条件や冷却条件が適切でなければ、変形や割れの予測精度にも大きな影響を及ぼします。

シミュレーション結果はあくまで「前提条件に基づいた結果」であり、その前提が妥当かどうかを見極める視点が不可欠です。結果を鵜呑みにするのではなく、「なぜこの結果になったのか」を考えながら向き合うことが重要です。
③ モデリングは簡単に ― 複雑にするほど見えなくなる
近年では、PC性能の向上により、CAEシミュレーションで扱えるモデルのサイズや情報量は飛躍的に増加しています。かつては計算時間やデータ容量の制約から、比較的シンプルな形状で解析を行うのが一般的でしたが、現在では実機に近い複雑な形状や条件を、そのまま再現することも可能になっています。
しかし、モデルに多くの要素を盛り込みすぎることで、かえって結果の解釈が難しくなるケースも少なくありません。
例えば、鍛造解析において細かな形状や詳細な摩擦条件、熱的影響まで一度に考慮すると、応力や材料流動の変化要因が複雑に絡み合い、「何が結果に影響しているのか」が見えにくくなります。
また、熱処理や切削においても、複数の条件を同時に盛り込むことで、変形や残留応力の変化要因を切り分けることが難しくなることがあります。

重要なのは、「どこまで再現するか」ではなく、「何を明らかにしたいか」です。目的に対して必要な要素だけを抽出し、シンプルなモデルで検証することで、結果の因果関係を、より明確に捉えることができます。
④ 分析は徹底して ― 結果を“読み解く”視点を持つ
CAEシミュレーションでは、結果を確認して終わるのではなく、その結果が本当に妥当なのかを丁寧に読み解くことが重要です。想定していた現象が再現されているのか、変形や応力の分布は物理的に納得できるものなのかを、一つひとつ検証していく必要があります。
例えば、鍛造解析でワークに傷や折れ込みのような不具合が見られた場合でも、単に「不具合が出た」と捉えるだけでは不十分です。
・材料流動がどの段階で乱れたのか?
・局所的な接触や応力集中がどこで発生したのか?
を追うことで、傷が生じるメカニズムまで読み解けるかが重要になります。
また、熱処理であれば、変形や割れの結果だけを見るのではなく、温度変化、相変態、応力の重なりの中で、どの要因が支配的だったのかを確認することが必要です。

切削においても、加工後の反りや寸法変化が出たときには、残留応力の分布や拘束の影響を含めて、その変化の理由を分析する視点が欠かせません。

重要なのは、結果を“眺める”のではなく、“読み解く”こと。なぜその結果になったのかを物理的な現象として理解し、原因までたどることができて初めて、シミュレーションは次の改善につながる情報になります。
⑤ キーパーソンの教育 ― 現場と解析の知見を統合する
CAEシミュレーションを現場で活かすためには、ツールそのものだけでなく、それを扱う「人」と「組織」の在り方も重要になります。特に、解析担当と設計・製造担当が分かれている場合、この両者をどうつなぐかが大きなポイントになります。
実際の現場では、
「解析では問題なしと判断されたが、実機では不具合が発生した」
「逆に、解析では懸念されていた現象が、実機では問題にならなかった」
といったケースも少なくありません。こうしたズレに対して、単に「解析が違った」「現場が違った」で終わらせてしまうと、CAEは活用されないまま形骸化してしまいます。

重要なのは、その差を起点に、なぜ違いが生じたのかを両者で検討し、すり合わせていくことです。設計・製造側が持つ実機の知見と、解析側が持つシミュレーションの知見を結びつけながら、条件設定や評価方法を見直していくことで、徐々に精度と信頼性は高まっていきます。
CAEを単なる解析作業で終わらせず、現場の改善や技術蓄積へとつなげていくためには、人材の育成と組織的な連携こそが、最も重要な基盤となります。
現場で成果を出すCAE活用へ
これら5つのポイントを意識し、継続して取り組むことが、シミュレーション精度の向上につながり、ひいては設計の精度や開発の技術力を高めていくことにつながります。
DEFORMの国内唯一の販売代理店であるヤマナカゴーキンでは、ツールの提供にとどまらず、こうした正しい活用方法や考え方の浸透にも力を入れています。本コンテンツでご紹介したポイントをベースにした教育とサポートを通じて、実際の現場で成果を生み出すCAE活用をバックアップしています。

CAEの活用に課題を感じている方や、より効果的な使い方を模索されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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このシミュレーションテーマでよくある質問
年間使用契約に比べ、永久ライセンス(買い取り型)は、どのようなメリットがありますか?
次年度からの更新費用が保守サービス料のみとなり、年間契約に比べ、少ない費用で更新できます。
長い目で見ると、費用的にも割安になります。
ライセンスについての詳しい内容は、下記ページよりご確認ください。
■ 導入プランページ
DEFORM製品8つのラインナップと2つのライセンス形態
レンタルライセンス(期間限定)から、永久ライセンス(買い取り型)へ変更することができますか?
変更することができます。
費用等につきましては、弊社営業までご連絡下さい。
ライセンスについての詳しい内容は、下記ページよりご確認ください。
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DEFORMで、どのような解析ができますか?
冷間・温間・熱間鍛造、押出し、引抜き、板材成形、破断解析、圧延、ロール成形、リングローリングなどが解析可能です。
※解析内容により、必要なテンプレートを選択する必要があります。
・3Dのテンプレート(鍛造、切削、コギング、圧延、押出し、フローフォーミング)
・2Dのテンプレート(鍛造、切削)
準備するハードウェア、対応OSについて教えてください
【OS】Windows11,10,8.1(64bit)
【メモリ】32GB以上推奨
【HDD空き容量】10GB以上
※CPUのスペックには特に必須スペックはございませんが、動作周波数が高いほど、計算速度が向上します。
※Windows以外にLinuxも対応しております。


