執筆者 : S.A ㈱ヤマナカゴーキン 営業部 主任
破断挙動を読み解くCAE解析|DEFORMが提供する高度な破断シミュレーション
破断が関わる工程は、工程設計者にとって“最も読みづらい現象”のひとつです。どこで割れが始まり、どの条件で進展し、最終的にどのような形状になるのか。クリアランスや押込み量のわずかな差が結果を大きく左右するにもかかわらず、その判断は経験や勘に委ねられる場面がいまだに少なくありません。
塑性加工に高い実用性を誇る「DEFORM」の破断解析は、破断挙動を事前に“読み解く”ための確かな手段となります。破断の起点、進展、カエリ量の見え方まで、工程設計に必要な要素を可視化し、試作レス化や設計精度の向上を可能にします。
本ページでは、CAEソフト「DEFORM」に搭載されている破断解析の基本概念から、実務で使える3つの破断解析手法、そしてヤマナカゴーキンが推奨する活用ポイントまで、現場の判断に直結する視点で解説します。
目次
破断をCAEで再現する基礎概念「ダメージ限界値」
破断をシミュレーションで再現するには、材料がどの程度まで“損傷(ダメージ)”を蓄積すると割れてしまうのか ―― 。
その「限界点」=ダメージ限界値を、あらかじめ定めておく必要があります。このダメージの蓄積度合いを数値化し、「限界値に到達したら破断が発生する」という考え方が、CAEによる破断解析でも基本となる概念です。

CAEソフトウェア「DEFORM」では、このダメージの蓄積をモデル化する延性破壊条件式として、塑性加工分野で最も広く使われている「一般化されたCockcroft&Latham(C&L)」がデフォルトとして使用されています。
C&Lは、最大主応力(引張応力)、相当応力、塑性ひずみの増分といった、破断に直結しやすい物理量を積分して求めるモデルで、鍛造、プレスなど多くの塑性加工に適用できる汎用性の高さから、実務でも定番となっています。
もちろん、DEFORMにはC&L以外にも、Osakadaの式、McClintockの式、大屋根の式(Oyane)といった主要な延性破壊条件式が標準搭載されています。材料特性や加工現象に合わせて使い分けることで、CAEシミュレーションにおいても、さらに高い実務適合性を狙うことができるでしょう。
CAEでの破断の表現方法 ─ DEFORM3つの破断手
DEFORMには、破断現象をどのように表現するかによって選択できる3つの解析手法が用意されています。
① 軟化
② 要素消去
③ 要素無効化
これらは、DEFORMが破断解析機能を改善してきた歴史の中で段階的に追加されてきたもので、左から順に、古い実装から新しい実装へと発展してきた経緯を持ちます。
いずれの手法も、材料に蓄積したダメージが限界値に達した際に、破断がどのように進展していくかを表現するものですが、そのアプローチは異なります。
以下では、3つの手法を個別に取り上げ、特徴やメリット、注意点を比較しながら、破断解析における最適な使い分けを解説していきます。
①【軟化】分離しない破断表現を再現

「軟化」は、DEFORMに初期から搭載されている破断表現の手法です。ダメージが限界値に達しても、当時の計算技術では物体を完全に二つへ分離させることが難しく、材料はあくまで“つながったまま変形する”という形でしか破断挙動を表現できません。CAEにおける破断解析としては最もシンプルなアプローチといえます。
一方で、計算時間の観点では、3つの破断手法の中で最も高速に解析を完了できます。設定もシンプルで扱いやすいため、例えば板材をパンチで打ち抜く工程において、打ち抜き後の“ダレ量”だけを予測したい場合には、軟化での解析で問題ありません。
軟化は、分離挙動の再現はできないものの計算コストが極めて低く、必要な現象だけを素早くつかみたい場面で有効な破断手法といえます。
②【要素消去法】破断面を生成する初期の分離モデル

「要素消去法」は、2005年前後のアップデートでDEFORMに追加された破断解析手法です。材料がダメージ限界値に到達した際、その部分の要素(メッシュ)を“消去する”ことで二つに分離させるアプローチです。
初期の「軟化」では表現できなかった“完全な分離”をCAE上で実現できるようになりました。
しかし、実務で使用するには多くの課題が残っていました。
要素を物理的に削除するため、破断面にはギザギザした荒れたメッシュが残りやすく、上記画像のように分離面が極端に不連続になります。
この粗い破断面は計算の安定性を大きく損ない、要素形状の乱れによってエラーが多発。解析が最後まで完了しないケースも珍しくありませんでした。
つまり、破断そのものを“表現すること”は可能になったものの、精度や安定性、実務適合性の面で依然として大きな壁があったと言わざるを得ません。
③【要素無効化】破断面の乱れを抑え安定計算を実現


要素消去法の課題を抜本的に解消したのが、近年DEFORMに追加された「要素無効化」です。この機能は、開発元SFTCによってここ2~3年の間にオリジナル機能として実装され、CAEによる破断解析の信頼性と安定性を大きく改善したアプローチです。
要素無効化では、ダメージが限界値を超えた要素を“削除”するのではなく、その要素を解析上「非表示(無効化)」として扱います。要素そのものは保持されるため、破断面のメッシュが崩壊したり、要素形状の乱れによって収束エラーが発生したりする問題を回避できます。
この仕組みによって、破断が進行してもCAE解析が途中で止まらず、最後まで安定して計算が流れるようになりました。
また、計算時間の面でも要素消去法より改善されており、実務的な運用に対する負荷が軽減されています。さらに、六面体メッシュにも対応しているため、四面体メッシュに比べてメッシュ品質が安定し、メッシュの歪みが発生しにくく、より高い精度で破断挙動を再現できます。
要素無効化は、破断解析をより現実的かつ安定して行うための実務的な手法として位置づけられています。
SFTC(Scientific Forming Technologies Corporation)は、米国オハイオ州の塑性加工CAE専門企業で、「DEFORM」を開発しています。
実用的CAE解析ソフトウェア「DEFORM」
CAEソフトウェア「DEFORM」では破断解析の開発が近年大きく進んでおり、とくに要素無効化の実装によって解析の安定性や精度が着実に向上しています。
しかし、三次元モデルでの破断挙動については、歯形をもつギア製品のように形状が複雑になるほど課題が残っており、現状での実用運用にはもう一歩という状況です。
反面、二次元モデルにおける破断解析は非常に実用性が高く、破断の起点や進展、カエリ量などの挙動を高い再現性で捉えることができます。ヤマナカゴーキンでも多数の検証を実施していますが、2Dの破断解析は実機挙動との一致性が高く、自信をもってご提供できるレベルです。
そのため、現段階では二次元による破断解析を強く推奨しています。

[関連記事]
> 破断現象をCAEでリアルに再現|DEFORMが実機と高い一致性を示した解析事例
破断の起点がどこに生まれ、どのように進展していくのか。条件設定によって挙動がどう変わるのか。工程設計に必要な“根拠”を事前に把握できるツールとして、DEFORMは現場の多様なニーズに応えるCAEソフトウェアです。
破断を“感覚”ではなく“データ”で議論できる環境は、工程設計・品質保証・生産技術にとって大きな価値になります。ぜひ破断成形に携わる現場の皆さまに、DEFORMの破断解析をご活用いただければ幸いです。
このシミュレーションテーマでよくある質問
ファインブランキングのシミュレーションもできますか?
はい、可能です。
ファインブランキングでは、材料が逃げないようにVリング(くさび)を適切な位置と深さで押し込む工程が重要になります。DEFORMでは、これらのVリング条件をモデル上に細かく設定し、実機に近い成形状態を再現したうえで最適位置や押し込み量を検討することができます。
そのため、材料の拘束状態を踏まえたファインブランキング工程のシミュレーションを、実務レベルで実施することが可能です。
計算時間を短縮させるためには、どのような方法がありますか?
1.オプション 並列計算を使用
複数のコアを使用して計算することにより、計算時間短縮の効果があります。
※別途ご契約が必要です。
※3D、HT3、F3に対応
■ ライセンスオプション資料のダウンロードページ
DEFORMの計算・業務効率を大幅に改善
2.ハードウェアを性能のよい最新のマシンへ変える。
※5年以上前のマシンをご利用の場合は、マシン更新をお奨め致します。
解析で計算できる要素タイプは何ですか?
2次元では、四角形要素です。
3次元では、四面体要素、五面体要素、六面体要素に対応しております。
全て1次要素を用いています。
年間使用契約に比べ、永久ライセンス(買い取り型)は、どのようなメリットがありますか?
次年度からの更新費用が保守サービス料のみとなり、年間契約に比べ、少ない費用で更新できます。
長い目で見ると、費用的にも割安になります。
ライセンスについての詳しい内容は、下記ページよりご確認ください。
■ 導入プランページ
DEFORM製品8つのラインナップと2つのライセンス形態



